日本放浪録(11) 自転車で尼崎の街を走る

2月4日に、とある御方から自転車をお借りし、尼崎の街を走ってみた。

その日はちょうど晴れていて、サイクリング日和だった。都市部だから当然なのだが、尼崎の街はビルが多かった。見渡すばかりのコンクリートジャングル。白浜とは大きく風景が異なる。

少し走ると、護岸された大きな川が見えた。その横には本屋もあった。ふと、買いたいと思っていたラノベのことが頭に浮かんだ。
「・・・づ●ちゃんのラノベ買おうかなぁ・・・」
そう思いながら本屋を見つめ、庄下川の手すりの方に目をやった。
そこには、沢山のユリカモメ達が羽を休めていた。

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考えてみれば、ここは海に非常に近い土地である。

渡り鳥である彼らからすれば、敵も少なく日当たりの良い橋の手すりを休憩所にするのはうってつけだったのであろう。

そうっと近づくと、彼らは警戒したようにこちらを見つめる。だが、ほとんどのカモメが逃げ出すことはなかった。彼らも人が敵とはなりえないと理解しているのだろう。
わたしは夢中でスマホを操作し、写真撮影に耽った。

その後、ユリカモメ達に写真の礼を述べて(もっとも、言われた側はまったく理解できないだろう)もう少し走った。
実は、自転車で走った目的は銀行にお金を降ろしに行くことだったのだ。
そうして走っていると、今度は公園でSLを見つけた。しかもD51型だった。

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「なぜにSL!?」
驚いて駆け寄り、どんなものか見てみた。どうやら大物公園(だいもつこうえん)には、SLが常設展示してあるらしい。
SLはいつ見ても格好良い。やはり人は、巨大な機械に憧れてしまうものなのだろう。
こんなSLが毎日見られる尼崎の方々を羨ましく思ったのだった。

というわけで、尼崎在住の鉄道ファンの方、もしくは尼崎に行かれる予定のある鉄道ファンの方。
この大物公園に行かれることを推奨させていただきます。

余談
また、ここは歴史ファンの方にもお薦めいたします。
謡曲「船弁慶」では、源義経と静御前の別れの場としてこの地域が登場するそうです(野暮なことを申し上げれば、『吾妻鏡』だとこのふたり、吉野山で別れたらしいですけど)
毎年8月には野外能舞台で「尼崎薪能」が開かれてるそうです。

参考
http://ama-kan.jp/spot/detail.php?id=236

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日本放浪録(10) 豊橋の恐竜達

私は、とあるビデオに懐かしい思い出がある。

「たのしいきょうりゅうたち」というビデオだ。私が子供の頃、両親が借りてくれた。内容は基本的な恐竜の紹介が中心だった。だが、プテラノドンやサーベルタイガーが出てこなかったので不満だったのか(当時、恐竜・古生物の紹介ならコイツ等は欠かせないと勝手に思っていた)、自ら守護獣の玩具をビデオの前に持ってきて「ほら~、プテラノドンだぞ~♪ サーベルタイガーだぞ~♪」と脳内補完で誤魔化してたことも覚えている。

考えてみると、何十回もこのビデオを見た気がする。少なくとも20回以上は見たはずだ。私の中での恐竜のイメージはこのビデオに出てくる映像でほぼ固まったと言っても過言ではないだろう。

その後、「ゴジラ対ガイガン」を上書きしてしまい見る機会はなかったが、内容はやたらはっきり覚えている。こんな過去の思い出をいつまでも後生大事に記憶していないで、もっと役に立つことを記憶すべきだと我ながら思う。

さて、前置きが長くなってしまったが、このビデオ、実は豊橋自然史博物館で撮影されたものだった。というか、今思い出すと同博物館のPVにしか見えない(ただし、かはく旧館の映像とかフィル・ティペットの恐竜モデルアニメとか初代ロストワールドとか、なにげにむっちゃマニアックな映像も入っていたが)。
この像を見る目的もあって、今回の学会に参加した。
2009年には、それぞれこんな色だった。実は以前は地味な色だったのだが、2000年代に入ってそれぞれの恐竜がリペイントされたのだ。以来、市民から何度もアイディアを募集し、様々なお色直しをしてきたのである。

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これが2009年訪問時の写真である。

トウジャンゴサウルスはリペイント後下にも関わらず、かなり磨り減って禿げていた。

だが、それがいい。

逆に言えば子供達にそれだけ親しまれたとも言える。この恐竜遊具が非常に愛されたか、そして優れているかを示す最良の証であろう。

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パキケファロサウルスは時代を反映してか、やたらと大きい。なにげにゴジラ立ちでもある。

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アンキロサウルスは、面長な顔になっている。正直、尻尾の先端が化膿してしまったエドモントニアとしたほうがまだシックリくるだろう。そして某ゾイドにも非常にソックリである。

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メガロサウルスは、今思うと笑うセールスマンみたいな顔つきに見えてしまう。

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イグアノドンと、無謀な挑戦を仕掛けようとするデイノニクスが睨み合っている。彼らも実は塗り替えられており、デイノニクスは昔は黄土色で、イグアノドンはもっと地味な色だった。

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トリケラトプスは変わってない。・・・ように思える。

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ブラキオサウルスは黒い斑点模様になったが、今尚その雄姿を見せつけている。酸欠にならないか心配である

そして、マイアサウラがこちら。博物館開館当時はマイアサウラが日米双方で話題となっており、そのブームに乗じて制作されたのだろう。

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実はマイアサウラも何度か色替えがなされており、最初は薄いオレンジ色だったものが、薄い黄土色(一部ニホントカゲのような明るい青)⇒青のまだら模様つき(後述)、と幾度となくリペイントされている。
また、この顔を見ていただきたい。

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優しい顔つきのお母さん恐竜に見えるだろう。みなさんもそう思われますよね?

(※偉大なるB級スポット愛好家、故・荒川聡子御大にもネタにされていた)

そして、2015年訪問の際には、こんな色になっていた・・・ 続きを読む

神奈川県立生命の星・地球博物館をたずねる(基礎編)

さてさて、お待たせいたしました!

神奈川県立生命の星・地球博物館の常設展についてお話いたします(写真は許可を得て掲載)。

 

この博物館は1995年に神奈川県立博物館(現・神奈川県立歴史博物館)の自然史部門における資料を統合する形、で新たに作られた、比較的新しい(といっても開館20年以上経過してるのですが)博物館です。

以前は、

日本の古生物学に多大な貢献をなされた故・ 濱田隆士先生や、
ダニ博士こと青木淳一先生

など、様々な方が館長を務められていたことで非常に有名ですッ!! ちなみに私は青木先生と握手したことがあります。

アクセスは入生田駅から徒歩でわずか5分!! 非常にアクセスが容易い場所です!!!

入生田駅

博物館の全景がこちら。威厳のある佇まいです。

神奈川県立生命の星・地球博物館

歩いていくと、何やら奇妙な足跡が・・・。そう、これ地球の動物たちの足跡なんです・・・! 彼らは展示室の中でも見られますから覚えておいてください。

 

そして門をくぐった先には!!

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この博物館の顔こと、チンタオサウルスさんがゴジラっぽい立ち方で出迎えてくれます!!

確かにトサカとか旧復元です。 立ち方も現代のカモノハシ竜のイメージとはかけ離れています。

 

だが、それがいい!

チンタオサウルスの頭上をご覧下さい。「宇宙波」と呼ばれる絵が真上に見えます。

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そう、このチンタオサウルスは地球を、宇宙を背負っているわけです

地球の過酷な歴史、それを背負いながらも、二本の足で立ち上がる偉大な力強さ、そして恐竜という太古の存在の美しさを感じさせてくれる骨格展示ではありませんか!! 個人的には、地球博物館の展示が今後大幅に改修されることがあっても、これだけは変えずに(または隣に新復元のチンタオサウルスを置くなどして)在ってほしいです。

隣にはジファクティヌスが、そして頭上にはアンハングエラとトゥプクスアーラがっ!!

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特にこの古代魚の全身骨格は日本で見られるのはここだけです! トゥプクスアーラの全身もここ以外ではあまり見られないゲラ。

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チンタオサウルスの足元を見ると、テレビ画面があります。ここではオープニングムービーとして、地球の歴史についてストレッチマンみたいな全身タイツのおっさんヒゲの生えた地球の化身っぽい人が語り合う映像が流れます。でも全然笑えないですよ。

その後進んで行くと、でっかいクマさんがいます。記念写真が撮れますよ。

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ある日~、博物館~、クマさんに、出会った~♪

その後常設展は、次のような構成です。

・地球展示室⇒地球の成り立ちや鉱物、隕石などを紹介。

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ヒジョーにでっかい!! でっかいぞぉぉぉ!!! このへんの展示は地学研究者からも高い評価を受けています。

・生命展示室⇒恐竜の骨格標本や昆虫・植物を軒並み展示。

うぉぉぉぉぉ!!! いっぱいいるぞぉぉぉ!!!

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ディプロドクス、ティラノサウルス、エドモントサウルス、プテラノドン(なんと実物!)、ステノプテリギウス、コネチカット州の恐竜の足跡、ゴンフォテリウム、アケボノゾウにコロンビアマンモスがいるぞぉぉぉ!!!

ペンギンモドキ(近年脳がペンギンに近縁とする研究も出た)プロトプテルムもいるぞぉぉお!!!

現代生物はラフレシアや数え切れない程沢山の美しい昆虫標本、魚類標本、巨大な樹木など、いっぱいいるぞぉぉぉ!!!

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そして、どれもこれも基本的に「やさしくさわってね」という太っ腹ぶり!!
でも優しく触らなきゃダメだよ、良い子のみんなお兄さんと約束だぞ!!

・神奈川展示室⇒神奈川県の動植物標本を展示。昆虫の森もありますよ!!

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カニさんやお魚さん、デスモスチルスとパレオパラドキシアたちが待ってます!! ツキノワグマやヘラジカもいるぞ!!

・共生展示室⇒環境問題や絶滅動物、都市の生き物などを紹介。

ここはニホンオオカミが怖いです・・・。

ニホンオオカミ

目の前に立つと、日本の絶滅種の名前をくら~い音楽とともに並べ立て、人類の業を教えてくれます・・・・。

あと、ミクロコスモスはなにげに凄いです。・・・たまに魚とかが水面に浮いてることがありますけどw

・ジャンボブック展示室⇒実物大の標本・模型などを所狭しと並べる「実物大百科事典」(ドラえもんに似たような話ありましたよね)

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巨大カニやらサメの歯やらアンモナイトやらカエルの歌やら貝殻やら鳥の羽やらなんやらと、大量の展示物があります!!そしてどれも実物大!!

・ミュージアムライブラリー⇒図書室。海外の科学雑誌も閲覧可能。

なんと、恐竜オタク界隈では有名なあの本も・・・!

・レストラン⇒ちょっと豪華な食事を楽しめます。

なんと、世界で唯一チンタオサウルスやトゥプクスアーラの全身骨格を眺めながら食事ができます!

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(↑レストランから眺めたチンタオサウルス。写り悪くて申し訳ありません・・・)

この間いただいたのは、恐竜展に合わせた特別メニューでした!

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これがまた美味い!

恐竜の味がしつつ、しつこい脂っこさがない、サッパリしたランチでした!!(※許可を得て撮影)

・ミュージアムショップ⇒特別展の展示解説書やオリジナルグッズなどが。

偉大な甲殻類学者・酒井恒先生のカニ図鑑の資料も買えますよ!!

・喫茶店⇒ショップの隣。まったりとした空間です。

 

・・・と、ちょっと興奮気味に書いてしまいましたが、以上が博物館の基本編です。

次は、地球編をお楽しみに!!

白浜風土記(30日目)冬の干潟でカニを狩る

諸事情で日記更新が滞り、大変申し訳ございません。地球博物館訪問編も、近日中に執筆いたします。

火曜日に、干潟にカニを獲りに研究所の皆様と一緒に内之浦干潟へ向かった。月末の実験で使用するためらしい。
今回の捕獲対象はタカノケフサイソガニ(Hemigrapsus takanoi)とケフサイソガニ(Hemigrapsus penicillatus)、ヤマトオサガニ(Macrophthalmus japonicus)とヒメヤマトオサガニ(Macrophthalmus banzai)だ。

残念ながら写真は撮り忘れたので掲載できないが、どれもかなり識別が難しい種類である。(一応種レベルで異なる、同属別種。見分け方は後述)
だが私は、ケフサイソガニ達はともかく、ヤマトオサガニは難しいだろうと思っていた。
ケフサイソガニなどは割と気温が低くても動けるし、岩の下に隠れているからそれなりに見つかるだろうとは思っていた。実際実験に必要な分は十分見つけられた。だが、ヤマトオサガニは夏に活発になる生き物なのだ。
いくら潮が引いていても、この気温では出てくるまい。

そう思っていたのだが、ヤマトオサガニがいると思しき巣穴、泥の中にぽっかり空いていた巣穴を掘り出すと、なんとあっさり出てきた!!
その後巣穴を掘りまくると、大判小判がザックザクと言わんばかりに大量のヤマトオサガニ(とヒメヤマトオサガニ)が出てきたのだ!!

これにはおったまげた。干潟のカニの活動時期からして、もっと深く潜っていると思い込んでいたからだ。だが、少なくともヤマトオサガニに関してはそうではなかったのだ。

自身の認識を改めねばならない。非常にいい勉強になった採集であった。

それにしてもコイツらの同定は非常に難しい。
彼らは基本的にこのように見分ける。写真でお見せできないのが残念だが、いずれ捕獲して撮影を行い、そのうち追加させていただく予定である。

・腹部に斑点あり・ハサミに付いている毛の房が小さい⇒ケフサイソガニ
・腹部に斑点なし・ハサミに毛の房が大きい⇒タカノケフサイソガニ

・ウェイビング(求愛行動)が「万歳」、第三歩脚(ハサミ以外の脚)の前節(要は先端部)に毛がある⇒ヒメヤマトオサガニ
・ウェイビング(求愛行動)が「盆踊り」、第三歩脚(ハサミ以外の脚)の前節(要は先端部)に毛がある⇒ヤマトオサガニ

少なくとも、ヒヨコの雌雄判定よりは簡単かと思われる。このブログをご覧の方は、夏にでもお試しいただければ幸いである。これら2種は、大抵の干潟に生息しているカニだ。見つけるのも容易いだろう(※ヤマトオサガニとヒメヤマトオサガニは場所によっては、どちらかが生息していないこともある)。
ただケフサイソガニとタカノケフサイソガニに関しては、明らかに雑種らしき個体も見られるため、上記に挙げた両者の特徴が混じったような個体もチラホラ存在する。同定の際はご注意頂きたい。

追伸
・・・深海棲艦が某魚型ゾイド(の野生体)に見えてしまうのは私だけだろうか?(笑)

日本放浪録(9) ケーキバトルin豊橋

先日、日本古生物学会に参加させていただいた(専門は動物行動学なのに!)
場所は豊橋市自然史博物館。
変ちくりん(褒め言葉)な色をしたマイアサウラが子供を労わり、イグアノドンとデイノニクスが睨み合い、そして巨大なブラキオサウルスがその巨躯を誇る公園の傍にある、大きな博物館である。
ティラノ、トリケラ、ステゴの恐竜御三家(だと思うんですが、どうでしょうか・・・?)に加え、プテラノドンやディメトロドン、マチカネワニなど、メジャーな古生物が勢ぞろいしている博物館である。

今回も、会場では古生物に関する様々な発表があり、大変勉強になった。なお、公表の許諾を得ていないため、ここで発表内容についてコメントするのは控えさせていただく。また、博物館の写真は館内のスタッフに問い合わせたところ、展示してある絵画などの著作権上の問題で控えて欲しいと言われたため、今回は掲載を見送らせていただく(なぜか、外の恐竜は問題ないとのこと)

さて、今回も懇親会へ参加させていただいたのだが、皆様は懇親会をどんなイメージだとお考えだろうか?

 

旧交を暖める場所、親睦を深める場所。

確かにそれも誤りではない。

だが、それだけではない。

 

懇親会、それはデザートをめぐる熾烈な戦いの場でもあるのだ。
人は甘いものを好む。だが、残念ながら懇親会で出されるデザートには限りがある。その限られた資源をめぐる熾烈な争いが起きる。ちょうど、縄張りをめぐって争い合うレッドディアーやシオマネキ、同種どうしの争いが激しかった(とよく言われる)トリケラトプスのように。

私も、今回その戦いに参加してきた。

仮面ライダークウガとン・ダグバ・ゼバの最期の戦いの如く、凄まじい殴り合いが起き、デザートの奪い合いが起き、激しい衝撃波まで上がった(ような記憶がある)。
では、その結果はというと・・・
・・・惨敗であった。私は戦いを制することができなかった。僅かなデザートにしかありつけず、数個のケーキを持って逃げ出すことしかできなかった。
私は涙に暮れた。だが、これは始まりに過ぎないのだ。

次回こそは負けないぞ、と袖で目にたまった雫を振り払い誓うのだった。
・・・古生物学会に限らず、凡ゆる懇親会に参加される方々よ。
私は自身の経験から、ここに警告しよう。
デザートをめぐる争いは厳しい。気を引き締めて挑まれることを推奨させて戴く。
(※この記事は事実をもとにしたフィクションです。実在の人物、団体とはあんまり関係ありません)