白浜風土記(40日目) イシガメでまんねん

ある日、私はいつものように実験所から自宅へ帰ろうとしていた。

そんな時だ。寮の同居人がなにやら騒いでいた。

「カメがいました!」

私は何事かと思いながら歩いた。すると、寮と実験所を繋ぐ道の脇に大きな甲羅を発見したのだ。

その生物は落ち葉の中にその身を横たえ留まっていた。

巨大な甲羅と小さな頭、まさしくカメであるKIMG0838.JPG

甲羅の模様と色からして、おそらくイシガメであろう。

「研究室で飼えないかな」と同居人の一部で声があがったが、設備的には難しいとのことでそのままここでそっとしておくことになった。

夕食後、しばらくしてまた同じ場所を訪ねてみるとカメはいなくなっていた。おそらく、水場を探して出かけたのだろう。その数日後にロードキルされたカメを見てはいないので、おそらく無事にどこかの池か川に戻ったのだろう。

このカメがその後白浜のどこかで幸せに暮らしていることを願いたい。

白浜風土記(39日目) 海の底に潜みし鎧の者ども

恐るべきことにもう2年も白浜日記を更新していなかった。

本当に申し訳ない。

ここからは記憶を頼りに書かせていただくことをご了承いただきたい。

さて、前々回(37日目)で書いた、白浜の海底からとれた甲殻類をご紹介しよう。

白浜の海には、こんな不思議なカニたちが住み着いているのだ。

 

サナダミズヒキガニ(Latreillia valida

脚がとても細いのが特徴のカニ。エビにも似ている気がする。

 

オキナガレガニの一種(Planes sp.)

このカニは白浜の海を漂っていた海藻に付着していたものである。脚に毛があるのが特徴。

 

サメハダヘイケガニ(Paradorippe granulata)

よく見ると顔のような紋様が見えるのがお分かりいただけると思う。これは内臓の配置と関係しているらしい。

 

トゲケブカガニ(Pilumnus orbitospinis)

ドレッジ調査ではよく見つかるカニで、割と白浜の海底によくいるらしい。

 

ミツカドヒシガニ(Garthambrus pteromerus

ゴツゴツした甲冑のような体をもつカニ。写真ではわかりにくいがハサミも太い。

 

チョウチンコブシ(Tokoyo eburnea

干潟でよく見かけるマメコブシガニの近縁種。やたらとハサミが細長い。

 

ガザミ科の稚ガニ。種類は不明。

 

オキノアカモンエビ?(Plesionika lophotes?)

一応オキノアカモンエビと同定したが誤っているかもしれない。

 

このように、たくさんの甲殻類がこの海の中に潜んでいることがお分かりいただけたことであろう。白浜の海は、多様ないのちに満ちた宝の海なのだ……!

 

なお、これらのカニは同定が完了した後、記録・資料保存のため冷凍庫にて安楽死させ、アルコールに浸けて標本として保管した。

研究としての資料を作る必要性も然りだが、海底に船を使って戻すわけにもいかないのだ。ご理解いただきたい。

もちろん、標本制作の前に手を合わせ黙祷させていただいた。